おいしい時間 しあわせのカタチ

 俺にもあれを出してくれよ、と言われるのは昨日もそうだがいつものことで、しかしそのつど佐希子やゴンさんは丁寧に詫びるだけ。

 そもそも枡屋は洋食屋ではないし、べらぼうに手間がかかるぶん値が張るものを、気軽さが身上のこのような店で簡単にメニューに載せるわけにはいかない。


「他に注文いいですか」


 半分ほど、黙々とスープを味わった佳織さんはおもむろに近くのお品書きを引き寄せる。


「ええもちろん。お腹に溜まるものを選んでくださいな」

「はい。じゃあ、そうだな……久しぶりにアジフライにします。他におすすめってあります?」

「うーん、じゃあちょっと合わないけど――」


 メニューにはない料理名に、佳織さんの目の色がきらりと変わる。


「もちろん、それにします。ご飯とお新香、大盛りで!」

「はい」


 佐希子は注文を奥に通して、自らは空いた皿を片づけに回る。


(そろそろ社長が見える頃じゃないかしら)


 スーパーの営業時間は九時半までだが、社長はうちを接待場としても利用してくれるからわりあい早い時間に来店することも少なくない。
 
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