おいしい時間 しあわせのカタチ
「はじめまして、棚橋製作で広報を担当してます、小谷と申します」
と佳織さんは会社員らしくしずしずと名刺を社長に渡す。
「ああ、どうりで佐野くんと知り合いなわけか。どうだい、こっちで一緒に」
「はい、ぜひ。――ああ佐希子さん、さっきの肉団子まだあります?」
カバンとグラスを取りに戻る道すがら、佳織さんが耳元で聞いてきた。
「ええ、多分。出しましょうか?」
「お願いします」
よほど気に入ってもらえたのだろうか。
それとも――? と、佐希子はふたりの関係を下世話に想像しながら丹後くんに声をかける。
先ほど、佐野くんが、何を置いても真っ先に佳織さんの元へ向かったとき、彼女の料理をやけに熱心に見つめていた気がした。
佐野くんの好物だったからなんじゃないか、というのはまた、ドラマ好きの短絡的な読み違いだろうか。
けれど――。
なんの迷いもなく佐野くんの隣に座り、先ほどまでの彼女にはありえない自らの食欲は二の次みたいな、しきりと彼の顔色を気にするような仕草は、”それ”以外にはないような。