おいしい時間 しあわせのカタチ

 その日、暖簾をしまう時間になってようやく社長一行は腰を上げた。

 忘れないよう、目立たない袋に入れて用意しておいたハンカチを確かに社長の手に握らせると、佐希子はゴンさんとともに一団を見送らんと外へ出た。

 息が白い。綺麗な星空に明日の朝は寒くなりそうだ、と無意識に手を合わせる。


「寒くない?」

「大丈夫、ありがとう」


 いいなぁ、と佐野くんと佳織さんのやり取りを見つめながら、佐希子はほんのりと切なくなった。長らくああいうやり取りとは無縁である。


「じゃあ佐希ちゃん、今日も美味しかったよ。ゴンさんも、ごちそうさま」

「恐れ入ります。お気をつけて」

「お気をつけて」


 とはいうものの、男たちは一行に去る気配がない。

 二次会はないようだが、タクシーを呼ぶか奥さまを呼ぶか、それとも気合を入れて酔い覚ましがてら歩いて帰るか、とおのおのが携帯片手に店の前にたむろする。

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