可愛いなんて思ってない!
「…おらへんで。」
(----------!!)
私はその言葉に耳を疑った。
え?本当に…?
ってことはユカリのこと…
もう好きじゃない、ってこと…?
(そういうこと…だよね…?)
私は心の中で何度も確認しながら
秦山の真意を探る。
「そうなんだ!良かった〜!
じゃあ私は?付き合わない?」
「えー!ずるい!私も祥一と付き合いたいー!」
女子たちが小声でガヤガヤと騒ぐ。
横を見ることはできないので
私は前を向いたまま
声だけで表情を読み取るしかできない。
「はは、ごめんなぁ。
俺そんな軽ノリで付き合うこと出来へんねん。」
すんませんねー?
と軽い調子で返す秦山。
さすが関西ノリというところかな。
(とりあえず何か…良かった…。)
色んなことが確認できて
内心ホッとする。
この軽いノリだから
あんまり信じない方がいいのかもしれないけど…。
「…あ、せや。小林、小林。」
「-----!」
すると突然
思わぬタイミングで私の名前を呼ぶ秦山。
私は少しビックリして
パッと横を見る。
「今日の夜、飯行くで。」
「………はい?」
私は秦山の言葉に
思わず目を見開く。
(夜飯行くって、ちょ……!)
どういう風の吹き回しなのか。
今まで秦山からこんな誘いがあったことはなくて
何なら2人で出かけたことなんて
買い出しとかくらいしかない。
唯一2人きりの場面とすれば
下校の時。
そんな私たちの関係なのに
こんな、しかも女子たちの前で、式中に
何て誘いをしてくるのか。
いや誘いっていうか
ほぼ強制っぽい言い方だったけど…。
「返事は?」
「え?」
「せやから、へ・ん・じ。」
と秦山が
割と真面目な声で言うので
私は思わず反射で
「…行く。」
と言ってしまった。