可愛いなんて思ってない!






「…おらへんで。」






(----------!!)





私はその言葉に耳を疑った。


え?本当に…?

ってことはユカリのこと…
もう好きじゃない、ってこと…?





(そういうこと…だよね…?)






私は心の中で何度も確認しながら
秦山の真意を探る。





「そうなんだ!良かった〜!
じゃあ私は?付き合わない?」

「えー!ずるい!私も祥一と付き合いたいー!」





女子たちが小声でガヤガヤと騒ぐ。

横を見ることはできないので
私は前を向いたまま
声だけで表情を読み取るしかできない。





「はは、ごめんなぁ。
俺そんな軽ノリで付き合うこと出来へんねん。」




すんませんねー?

と軽い調子で返す秦山。
さすが関西ノリというところかな。



(とりあえず何か…良かった…。)




色んなことが確認できて
内心ホッとする。


この軽いノリだから
あんまり信じない方がいいのかもしれないけど…。





「…あ、せや。小林、小林。」

「-----!」





すると突然
思わぬタイミングで私の名前を呼ぶ秦山。


私は少しビックリして
パッと横を見る。





「今日の夜、飯行くで。」

「………はい?」





私は秦山の言葉に
思わず目を見開く。



(夜飯行くって、ちょ……!)



どういう風の吹き回しなのか。


今まで秦山からこんな誘いがあったことはなくて

何なら2人で出かけたことなんて
買い出しとかくらいしかない。

唯一2人きりの場面とすれば
下校の時。





そんな私たちの関係なのに

こんな、しかも女子たちの前で、式中に
何て誘いをしてくるのか。


いや誘いっていうか
ほぼ強制っぽい言い方だったけど…。





「返事は?」

「え?」

「せやから、へ・ん・じ。」




と秦山が
割と真面目な声で言うので

私は思わず反射で





「…行く。」





と言ってしまった。





< 14 / 60 >

この作品をシェア

pagetop