君のいる世界
2 年前

 廊下の突き当たりには、大きな窓があって晴れていたなら遠く都庁やスカイツリーが見えるのだという。

 また別の窓からは、遠く富士山も見えるのだとベンチで隣に座ったおじいちゃんが教えてくれた。

 休日である今日は、風に舞うグライダーが窓から良く見えた。ずっと見ていると、あちこち動き回っていて楽しいのだとか。

 ここからほど近い河川敷でグライダーを車で引っ張って空へと飛び立たせるのだそうで、ふわりと空に浮く感じはどんなのだろうと想像すると楽しかった。


 おじいちゃんと並んで外を見ながら話をしている。おじいちゃんは看護婦さんから持たされたという筒を持って、それに息を吹き込むということをしていた。


「ねえ、おじいちゃんそれ何? 」

「これはなぁ、息出来るように練習するんだと。1日30回のセットを4~5回するように言われてるんだよ」


 そしてまたふーっふーっと筒に息を吹き込んでいた。


 体が丈夫なだけが自慢で、働き者のおじいちゃんがご飯が食べづらいと言い出したのは、お正月にみんなでお節料理をつついている時だった。
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