ひとみ
開いた扉から見えたものに、ボクの頭はすっかり冴え渡った。
冴え渡るどころではない。
全身の血液が体中をもの凄い勢いで駆け巡るのを感じることが出来るくらい、激しく心臓が鼓動している。
ボクは一度扉を閉めた。
そして、大きく深く深呼吸をした。
そして、再びドアノブに手をかける。
激しく心臓が鼓動している。
思わずゴクリとツバを飲む。
体の芯から激しく熱さを感じた。
ボクはゆっくりと扉を開いた。
「ひとみさん、い、いったい、ど、どうした、んですか?」
言葉が詰まってしまう。
もう一度、ボクは深呼吸をして彼女を見つめた。
ひとみさんの美しい瞳はうっすらと水の膜に覆われている。
「な、なにか、わ、忘れ物、ですか?」
ボクの言葉に、彼女は微かに小さく頷いた。
あっ?忘れ物、ですか。
まぁ、そんなものか、世の中って。
だから、ひとみさんあんなにばつが悪そうな顔してるのか。
なんだよ、また、色々思い出しちゃうじゃないか、せっかく少し落ち着いたところだったのに。
「なにを忘れたんですか?ボクが取ってきてあげますから。まさか、パスポートとかですか?」
ボクね言葉に彼女は小さく首を振った。
「自分で、するから、いい」
そう言って、ひとみさんは靴を脱いで家に上がった。