ひとみ
ひとみさんとボクはこの灯火の前で、缶ビールで乾杯した。
思えば、お酒に関してはずいぶん飲めるようになった。
こうやって、ちょいちょいと彼女の晩酌に付き合わされているからだろう。
ビールの苦味も最初はイヤだったが、最近は寧ろ好きになっている。
逆にチョイと苦味の少ない発泡酒とかだと物足りなさを感じる事もある。
人間変われるものである。
女性と接することも最近、あまり苦にならなくなった。
これも、ひとえにひとみさんで女性に対する免疫力がついたからであろう。
そんな、くだらないことを考えていると、灯火の向こうのひとみさんが変な提案をしてきた。
「ねぇねぇねぇ、駿平君。怪談しよ、怪談」
「なんで?しかも突然に」
訝しがるボクを、お構いなしに彼女言った。
「夏だしぃ~、ろうそく点いてるしぃ~」
正直、ただの思い付きなんだろうけど、多分、ボクがどうこう言っても、こうなるとなにも覆らないだろう。
「わかりましたよ。じゃあ、怪談やりましょうか」
ボクは無抵抗のまま彼女の軍門に下った。
「じゃあ、ボクから話しますよ」
意外と乗り気である自分がいたのも確かであった。