wish
病院を出たところで、ふと昇は立ち止まる。
ここまで昇は歩いてきた。
近い、とも言えないが、家から歩けない距離でもなかったからだ。
だが、母は今日退院したばかりだ。
「タクシー使う?」
気を遣って言った昇の言葉も、母はきょとんとした顔で聞き返す。
「え、なんで?」
「なんで、って…」
「気を遣わなくても大丈夫よ。それにタクシー使うとお金もったいないからね」
あまり納得いかなかったが、母の荷物を、半ばひったくるようにして持つと、
最初は遠慮していた母も、ありがとう、と言う。
家に帰るまで会話らしい会話はそんなになかったが、母も帰ってきてようやく、
ひんやりとしていた空気がなくなったような気がした。
部屋に足を踏み入れるとすぐに、母はいつもの椅子に腰をおろし、軽く背伸びをする。
「やっと帰ってこれた」
と、こぼしながら。
昇も、母の反対側に腰をおろした。
ここまで昇は歩いてきた。
近い、とも言えないが、家から歩けない距離でもなかったからだ。
だが、母は今日退院したばかりだ。
「タクシー使う?」
気を遣って言った昇の言葉も、母はきょとんとした顔で聞き返す。
「え、なんで?」
「なんで、って…」
「気を遣わなくても大丈夫よ。それにタクシー使うとお金もったいないからね」
あまり納得いかなかったが、母の荷物を、半ばひったくるようにして持つと、
最初は遠慮していた母も、ありがとう、と言う。
家に帰るまで会話らしい会話はそんなになかったが、母も帰ってきてようやく、
ひんやりとしていた空気がなくなったような気がした。
部屋に足を踏み入れるとすぐに、母はいつもの椅子に腰をおろし、軽く背伸びをする。
「やっと帰ってこれた」
と、こぼしながら。
昇も、母の反対側に腰をおろした。