wish
「明日からまたがんばって働かないとね」

背伸びをし終えた母が、唐突にそう言った。


「え、まだ休めばいいのに。母さん、働きすぎだよ」

今回だって倒れたのに…
その言葉は飲み込んで、心配を伝える。

「でも、働かないと生活できないでしょ?」


そう言われると何も反論ができない。

父が自殺してから、家はかなりの貧乏生活になった。

今は落ち着いているが、当時は生活することも難しいほどだった。


「昇は何も心配しなくていいのよ。今までだってそうしてきたんだから」


生活の話になると、母は決まってこう言うのだ。

俺が何も反論できなくなることを知っているから。

今までもずっとそうだった。




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