wish
そのアドレスを眺めてみて、何かくすぐったいような、そんな感じがした。

だが、連絡して何を言えばいいんだろうか、と。


俺が連絡とったところで、何になるんだよ。


少し複雑な気持ちになって、携帯電話を、ぱちん、と閉じた。

そして、昇はいつものようにまた机に体を沈めた。



気がつくと、また授業は終わっていて、昇はゆっくりとした動作で体を起こす。

すると、頃合いを見計らったように誠が近づいてきた。


「さっき三田さんに絡まれてただろ?」

「知ってたんなら助けろよ。俺、あの女苦手…」

「そんな感じするな。で、何話してたんだ?」

誠が机に体を傾けて楽な格好になる。


「宮内に、連絡しろ、って」


ポケットに手を入れながら、

「さっき連絡先教えられた」

と言うと、誠は驚いたような顔になる。


「今までアドレス交換とかしてなかったわけ!?」


そっちかよ。

昇は少し苦笑した。


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