wish

転落

宣言どおり、しばらくしてから父は会社を辞めた。

当然、会社からは「なぜ?」という疑問がわきあがる。

父は表向きには「一身上の都合で」としたが、仲のよかった同僚たちには理由を明かして辞職をした。


退職金と、いろんなところから掻き集めたお金で店舗を借り、
店を開く準備は着々と進んでいった。


昇も、父の役にたとうと、いろいろと手伝ったり、学校で友達に宣伝をしたり。

本当に、うまくいくようにと応援していた。


「そろそろだね、父さん」

「あぁ、ようやく昔からの夢が叶うんだなぁ」

父は目を細めて、自分の店を眺めた。

その姿がとてもきらきらしていたので、昇も嬉しくなる。


いつか自分もこんな顔ができるだろうか。


昇も父の横に並び、完成間近の店を仰いだ。


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