wish
「ケーキ屋のこと、無責任なこと言ってごめん」


急に何のことかと返事に詰まってしまった。


「うまくいくよ、って…」


そういえば店に来てくれたときに言ってくれたっけ。

思い出して、友達の顔を見る。


「いいよ、おまえ買いに来てくれたじゃん」

「そうだけど…」

「心配してくれてありがとな」


昇が言うと、友達は少し安心したように表情を緩ませた。

それが少しだけ昇の救いとなった。


家でも、ケーキ屋をやめてしまった父は何もせずに1日を過ごしているし、
母は仕事をするようになった。

変わってしまった家族のなかで、昇は居心地の悪さを感じていたのだ。

今日の友達の言葉で、ほんの少し、気分が晴れた。


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