wish

「まぁ、みんな楽しんでやってくれ。じゃぁ今朝はこれで終わりだ」

荒谷がそう言うとクラスの雰囲気ががらっと変わった。

みんな文化祭のことで浮き足立っているようだ。

ふと、誠のほうに目をやると、さっそく友香に話し掛けていた。

そこで友香と目があったが、すぐに視線をはずすように顔を背ける。


何してるんだろ、俺…


と、カバンに目をやりプリントのことを思い出した。

荒谷がまだ教室にいるのを見て、急いで渡しに行く。

「先生、これ」

言って渡すと、荒谷はプリントをざっと眺めて

「おまえ就職するのか?」

と聞いた。

黙ってうなずくと「そうかぁ」と荒谷はつぶやきながら、
またプリントに視線を落とした。

「じゃ、確かに預かったから」

と言い、今度はクラスに向かって言った。

「進路希望の紙、持ってきた者があれば出しにこいよー」

昇は、用は済んだとばかりに席に戻る。

今日もまた眠っておこうと机に突っ伏した。




< 28 / 218 >

この作品をシェア

pagetop