wish
「まぁ、みんな楽しんでやってくれ。じゃぁ今朝はこれで終わりだ」
荒谷がそう言うとクラスの雰囲気ががらっと変わった。
みんな文化祭のことで浮き足立っているようだ。
ふと、誠のほうに目をやると、さっそく友香に話し掛けていた。
そこで友香と目があったが、すぐに視線をはずすように顔を背ける。
何してるんだろ、俺…
と、カバンに目をやりプリントのことを思い出した。
荒谷がまだ教室にいるのを見て、急いで渡しに行く。
「先生、これ」
言って渡すと、荒谷はプリントをざっと眺めて
「おまえ就職するのか?」
と聞いた。
黙ってうなずくと「そうかぁ」と荒谷はつぶやきながら、
またプリントに視線を落とした。
「じゃ、確かに預かったから」
と言い、今度はクラスに向かって言った。
「進路希望の紙、持ってきた者があれば出しにこいよー」
昇は、用は済んだとばかりに席に戻る。
今日もまた眠っておこうと机に突っ伏した。