朱色の悪魔

「朱音様?」

「…」

「ずいぶんうなされていましたが」

「…」

夢…か。

目を覚ますと目の前に飛び込んできたのは畳。せめてもの情けに布団がかけられてた。

空は茜色だ。ずいぶん眠りこけていたらしい。

当たり前のように家庭教師さんは帰ったと告げられて、また目を閉じる。

痛い…苦しい…。

全身のあちこちが悲鳴をあげてる。

声を出すのさえ喉が焼けて痛くてしかたがない。

眠ってしまいたい。こんな風ならずっと…。

落ちていきかけた意識は、不意に嫌な音を立てた胸に引きずり戻されて、胸が締め付けられたかのように激しい痛みを生む。

「っう゛ぅ…」

「朱音様?」

ズキズキと心臓が嫌な音を叩き始める。

絞めつけられていくような感覚に、体が無意識に小さくなっていく。

胸を押さえたまま呻き声を出す私に異変を感じたのか運転手さんが離れていく。
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