朱色の悪魔

2 魁side


気絶するかのように意識を飛ばした朱音の喉からヒューヒューと空気が漏れるような変な音がする。

朱音の顔色も、手足も青く見えてしまうくらい白かった。

「…朱音」

なんだよ、これ。なんの、冗談だよ。

昨日まで、普通だったろ。毎日抜け出して、遊び回ってたんじゃねぇのかよ。

なのに、なんで、こんな…。

「魁、寝かせてあげて」

「兄さん…あ、朱音…」

「魁」

留榎兄さんに肩を叩かれて、朱音を布団に戻す。

留榎兄さんは黒いアタッシュケースのような鞄を側に置いてそれを漁る。

中には大量の薬や注射器、メスとかまで入ってた。

訳わかんねぇ配合が終わって、太い注射器の中に入ったそれは、まるで棒切れみたいな朱音の腕に刺されて、全部入れられる。

しばらくして朱音の呼吸が収まって、弱々しい息づかいが聞こえてくる。

でも、すぐに表情を歪めて胸を押さえて苦しみ出してしまった。

「うあ…」

「…兄さん、なんで、朱音…」

やっと出た言葉はそんな言葉で、留榎兄さんは忌々しそうに瓶に入った錠剤を見つめ、やがてそれを取り出してすりつぶし始めた。
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