朱色の悪魔

「帰ろうか。僕たちの部屋に」

研究者はそう言うなり、華月組に背を向けた。

その不用心さに驚くまもなく、背後から迫ってくる足音は複数。

研究者は私を連れたまま外に停めてあった車に乗り込む。当然のように押し込められた。

直後、門を飛び出してきた華月組に対抗したのはどこから溢れてきたのか、黒スーツの集団だった。

だが、彼らの手には武器がある。戦闘が開始される。それを尻目に車は急発進した。

「ッ…」

「あれは僕のスポンサーだった組の残党だ。お前が潰したみたいだけどな」

「枦…」

「大丈夫。彼らにはなにもしてない。ただ、逃げるのを助けてくれるだけだ」

研究者はまるで興味がないと言うように振る舞う。それよりも熱心に鞄を漁っているようだ。

やがて取り出したのは黒い機械。それを私に近づけた瞬間、ビーという耳障りな音が車内に鳴り響く。

「やれやれ、首輪をつけられていたようだな。…脱ぎなさい」

「は?」

「服を脱げと言っている。全てだ」

「っな…んなことッ…かは」

こ、んな時にっ!!

突然始まった発作に抗うことができずに胸を押さえて車のシートに倒れ込む。

っくそ…研究者は目を丸くしてる。知らないのか、こいつ…。

だが、それも一時。研究者は黒い手のひらサイズくらいの箱のようなものを取り出すと、それを首に押し当てられる。

それがスタンガンだと気付いたときには一瞬の痛みと共に意識が急速に遠退いていった。
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