朱色の悪魔
「…魁の意見に、反対は出来るか。留榎、由羅」
「…」
「…」
沈黙を破ったのは親父だった。
留榎兄さんも由羅兄貴も口をつぐんだまま。
親父が立ち上がる。俺を見る目は優しかった。
「魁の言う通りだろう。朱音を救ってやれなかったのは、俺たちの力不足だ。もし、また朱音を見捨てるようなことがあれば、華月は何のための組織だ」
親父に肩に手を回される。
親父の眼光は鋭い。華月組組長の顔は初めから揺れなど持っていなかった。
「朱音を探せ。そして、必ず救い出せ。あの子1人に背負わせるな」
「はい」
即座に返事をしたのは神哉兄貴だ。
すぐに行動に移した神哉兄貴は組員たちに指示を飛ばす。
初めは動かなかった由羅兄貴が大袈裟にため息をついて、腕を頭の後ろで組む。
「俺が招いたからには、片をつけないとな…」
由羅兄貴は一言そんなことを漏らして、廊下に出ていった。
最後までうつむいていた留榎兄さんと視線が交わる。
苦笑されて、留榎兄さんも廊下に出ていった。