朱色の悪魔
「魁様ー!朱音様ー!」
「うるせぇ」
「…」
問答無用で顔面に鞄を殴り付けた弟くん。スーツの男は顔面を押さえて地面に転がったままプルプルしてる。
「誰が迎えに来いって言った。あ?」
「呼ばれないのがわかってて、連絡待ちなど致しません…」
「わかってんなら来んな」
弟くん不機嫌オーラ全開。スーツの男はやっと起き上がったのに、弟くんの剣幕に真っ青になった。
野次馬が出来始める。めんどくさ。
弟くんの袖を引っ張る。弟くんも周りの野次馬見て舌打ち。
「おい、行くぞ」
「え?あ、はい!すぐに!!」
後部座席に乗り込む。弟くんが隣に座る。
ドアはスーツの男が閉めて、ものすごいスピードで運転席に乗り込んだ。
すぐにスタートした車。運転手はご機嫌だ。
「おい、平出」
「はい?」
スーツの男が答える。
ブリザードが駆け抜けた。
「次はねぇぞ」
「…は、はぃ」
顔色真っ青。ご愁傷さま。
弟くんはシートに深く体を沈めて、腕を組んだまま目を閉じる。
頭をポンポンってすると弟くんは少しだけ目を開けて、フッて笑う。
家に戻るまで、一言も話さなかった。