朱色の悪魔
「朱音から離れろ。っ今すぐ!!」
「ッ!?」
高校生が出すような殺気ではない。まさに大人の、殺し合いを知る者が発する殺気だ。
だが、研究者は咄嗟に察した。
目を閉じたまま、苦しげな表情を浮かべ倒れたままでいた少女の腕を強引に掴む。
そして、少女を自分の盾に、そしてその首に腕を回し人質に華月に見せつけるかのように少女をさらした。
少女に抵抗する力はない。研究者にされるがまま、ただ、か細く息を繋ぐだけ。
研究者は笑った。まだ、活用できる。
「取引といこうじゃないか。これはくれてやる。その代わり、僕を見逃してもらおうか?」
「てめぇ、殺すぞ」
「ッ!?それ以上来るな!!」
「っう゛…」
少女の首に回した腕に力を込める。少女の発した声に魁の動きが鈍る。
あぁ、やはり。
研究者は笑う。まだ役に立つとは、とんでもない拾い物だ。本当に、この子は…。
「頼むよ。この子を殺したくないんだろう?なら、僕を見逃してくれ」
「あ゛…っく…………」
徐々に力を込めていく腕の力。
少女が苦しむ声を上げる度に、彼らは怯む。
だから、もっと苦しめ。助けを呼ぶ声を出せ。
研究者は焦りをひた隠し、余裕をうたうように笑った。