朱色の悪魔

「冴木~飯だぞー」

「分かった!」

俺とほぼ同時期に入って…いや、俺と同じく拾われたヒロの声に、いつのまにか昼になっていたことに気づく。

ダメだな。こんな日の空は嫌いだ…。

配給の弁当をもらって、工事現場の隅っこで輪を作る。もう日常と化してる。

「あれ、おやっさん来てたんすか?」

「おう。ちゃんとやってっか」

先輩の声に顔をあげたら、親父さんがいた。ニコリともしない顔は険しいままで、俺たちの作ってる輪の中に入ると、どっしりと構えて座った。

珍しい。いつも顔は見せてもこんな風に座ったりしないのに。

先輩が当たり前のように配給の弁当を渡すと、食べ始めた。…本当に珍しい。

「魁、ヒロ、慣れたか」

「え?」

「っはい!最初の頃と比べたら!!」

突然の言葉に呆けた俺に対して、ヒロは大声で答えてる。それでもまだ呆けてる俺におやっさんの視線が向いた。

「魁は」

「っはい。大体は…」

もう一度聞かれてやっと我に返る。拾われて以来、会話なんかしなかったから驚いた…。
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