ウサギとカメの物語 2


カメ男に頼まれた藤代部長へ提出しなければならない資料の提出をして(考えごとはしてたけど一応話は聞いていたのです)、自分の仕事もきっちり終わらせて。
定時の17時半を過ぎた18時には全て終えて、女子更衣室で疲労感たっぷりのため息をついていた。


真野さんに色々聞きたいことはあったんだけど、彼女は中学生と小学生のお子さんがいるのでほとんど定時で帰る。
だから彼女はとっくに帰社しちゃってて、聞きたいことも聞けなかった。


ただ勘づいているだけなのか、それとも完全にバレてしまっているのか。
確認したかったけど、どうやって確認するべきなのか迷うところでもあった。


「完全にバレてるでしょ。あれは」


駅まで歩きながら、グサッと突き刺さるような言い方で指摘してきたのは奈々だ。


「う〜ん、やっぱりそう思う?」

「どう考えてもバレてるね。気づかないうちに須和のこと話してたんじゃないの?」

「ううん!話してないよ!そのへんはめちゃくちゃ気をつけてるんだから!」

「2人でラブホ行くとこ見られたとか」

「……………………………………行ってないし」


なんてこと言うのよ、奈々さん。
あなた同じセリフ、田嶋に言える?言えないくせに!


怨念を込めた目で奈々を見ていると、彼女はすごく楽しそうに、あはは、と笑うのだった。


「まぁ、でも真野さんのことだから心配ないでしょ。上に報告とかしないだろうし」

「報告しないかなぁ!?大丈夫だと思う!?」


よっぽど必死な形相をしていたんだと思う。
お願いだから同意して、という気持ちを詰め込みながら奈々に言ったものの、彼女は「さぁね〜」とどこか曖昧な返事しかしなかった。


「心配なら本人に伝えておいたら?誰にも言わないでください、って」


真野さんはたぶん、そういうことは他の人に軽々しく吹聴したりはしないだろう。
でも奈々が言ったみたいに、自分の知らないところで目撃されていたりしたならば、一応言い訳はしておきたい。


まさかこんなに近い関係の人にバレるなんて、私の日頃の行いが悪かったのかなぁ。

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