奪うなら心を全部受け止めて
帰り道の心配をしてるんじゃないんだ。佳織の中身を心配してるんだ。
…なのに、…そうか。女心は言葉とは裏腹なのか、…それともこれが本心か。
「そうか…。悪かったよ。偉そうな言い方をして、悪かった。…そういう事か」
千景は啓司を見た。
「あ、あの、…俺…」
「変な時間に来て、…邪魔して悪かった。帰るよ。じゃあ、おやすみ」
「あ、千景…」
ふぅ。
「じゃあな、佳織。…言っといてくれないか?先輩に。
“もう千景は必要ないから終了だ"って、佳織から言っといてくれ。
“守ってくれる人は別に居る、私は大丈夫だから"ってな」
その方がいい。
高木先輩がそう受け入れてくれた方が俺にはいい。なんの縛りもなく佳織に接する事が出来る。だけど、今の佳織は本当に大丈夫じゃないんだ。
なのに、…。仕方ないか。…充分大人になった佳織に対して、意思を無視した干渉は出来ない。
護る意味も…ないと言えば、もうずっと前からないはずなんだ。
もう、とうの昔に、カムフラージュ作戦は自動消滅しているんだと思う。多分、高校生活が終わった時点で…。多分な。
それを明確に言って来ない先輩も…ずるい。馬鹿みたいに…律儀にしていた俺もな。
だが、俺もそれを利用したがっていたのかも知れない…。無条件に佳織に会えるから。
佳織に触れられる…。
…好きだと言えるから。それが偽りだと思われていてもだ。
啓司と関係を持ったのか…。そうなんだな、佳織。
何故だ…。何きっかけなんだ、佳織。どうしてだ。
俺じゃ駄目だったのか?
後悔はないのか?それほど…やる瀬ない気持ちに成る事があった…そういう事だろう?
「ち、千景さん!…千景さん、待ってください」
「啓司…」
追い掛けて来た啓司が俺の腕を掴んだ。