奪うなら心を全部受け止めて

「口の中、大丈夫か?ベロンベロンになってないか?」

少し痛そうな表情をして先輩が聞く。

「大丈夫!もう大丈夫です!例えベロンベロンになってても、食べたいモノは食べます」

「ん、はぁ…、そうか。ああ…悪い。ちょっと、コンビニ行ってくる。近くだからすぐ帰って来る。食べてて」

「ほぁい、…もう食べてまふ、ふふ」

「なっ…。アハハッ。…ま、行ってくる」

コクコク頷いて、口パクで行ってらっしゃいと言い、手を振った。…むせそうになった。

ハッとした顔の先輩は、頭をガシガシして笑って手を振って出かけて行った。
んん?何だろうな…。


「ふぅ、食べちゃった…。でも珈琲は飲めないな…、熱いのって痛そうだし」


「ただいま。佳織?帰ったよ?」

「あ、お帰りなさい」

玄関に走った。

「本当に早かったですね」

「…ただいま。…いいもんだな」

頭を撫でられた。

「え?」

「ただいまって言って、お帰りなさいって言われるのもってな?」

「高木先輩、あの…」

「優朔。…クスッ、…なに?」

「もしかして、…一人暮らしですか?」

「あ…ああ、…そうだよ」

やっぱり、そうなんだ。

「そうなんですね…」

「なんだか訳あり男子は嫌になったかな?でも気にしなくていいから。訳は俺の問題だから。
で。な、に、かな?
まだ聞きたい事、あるんじゃない?」

「えっと、…ご飯作れるんですね?
お皿とか、調理機具とか、揃ってるから。調味料も沢山あるし」

また並んで座った。

「作れるよ、簡単なモノだけどね。それより、はい」

そう言ってコンビニの袋からアイスと冷たい紅茶を取り出した。

「薬じゃないけど、これだったら食べながら冷やせるだろ?それにさっき、紅茶を選択肢に入れたのに、紅茶なかったし…。嫌い?紅茶は飲める?」

「高木先輩…」

首を横に振る。ウルウルする。

「…もう。…優朔だって言ってるだろ?さあ、食べないと溶けるぞ?アイス」

「うっ、はい、頂きます。アイスも大…」

「大好きなんだろ?」
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