奪うなら心を全部受け止めて

・・思慮深い、数学


「じゃあ、次この問題やってみて?」

「はい」

アイスを堪能して、やっと本来の目的、数学を教えてもらってる。

「なんだ佳織。出来てるじゃないか。なん問かやって出来たし、応用も出来てるし、大丈夫だよ」

「教え方がいいからですよ。今は出来ても…忘れちゃうかも知れません」

「まあ、公式だよな。
公式を間違わずちゃんと使えたら、後は計算を誤らない限り答えは必然に出るよ。数学ってそんなもんだよな」

「…なんか、ちょっと深いです。数学の話として聞かなければ、違うモノにも当てはまりそうです」

「ん〜そうかもなぁ。
例えば単純な1+1=2。
こんな計算式でもパターンは色々だろ?
答えを2にする式は他にもある。
まず簡単なやつで、2+0、3−1とかあるだろ…。引いていくならまだまだ沢山あるし、頭に−を使っても作れる。
複雑に+−を何度も使えば幾つもあるよな。×÷も使えば更に複雑に増える。
導かれる答えは一つでも、たどり着くには色々あるって事だな。間に有るのは=だ。…不等号では無い。…=じゃないと成立しない、この場合はな…」

「はぁ…こうなると、哲学っぽくなって来ますね」

「子供の頃は単純な1+1みたいな式しか知らないのに、知って行くんだよなぁ、他にも色んな方法があるんだって。
複雑なモノを選ぶか、単純明解なのを選ぶかで、たどり着く迄の時間は違う。沢山頭も使う。導かれる答えは一つなのに、紆余曲折、迷いに迷う。だけど答えはどれも2なんだよな。
そして必ず辿り着く。解らなくなったら原点、単純なモノに帰ればいい。
…なんて、なんの勉強だってな。語ってしまった」

「…数学です」

「ハハ。…。アハハッ。…はぁ。ごめん、どんどん理屈っぽくなった。んん」

俺達は1+1=2。
1×1=1になろう。二人で一つだ。
< 61 / 216 >

この作品をシェア

pagetop