それが伝え方なのです



ううぅ、女子として器用さが負けている気がしてならない……



「こういうの、憧れだったでしょ?」


「へ?」



こういうの?こういうのって……今の?



「あ、」



そういえばずっと前に言ってたかもしれない。確かDVDで童話を映画にしたやつをいっしょに見てたときだ。


ちょっと憧れるっていうか、一度ぐらいこういうことされてみたいよねってそのとき言ってたんだけど…静くん、覚えていてくれたんだ。


ちょっとした会話だったのにな。嬉しい、というかそれももちろんあるけどちょっとだけ気恥ずかしい。


だってわたしですら覚えていないおかしい言動とか静くんが覚えてるかもしれないだもん。いやでもたまたま覚えていただけかもしれないし。……それすら聞くのもはばかられる。



「でもなんで今したの?」


「んー…(やよの水着見られるのいやだったから無理矢理ついていくお詫びっていうのもな)」



素朴な疑問のつもりだったけど困ったように笑うだけの静くんは何も答えてくれなかった。特に知りたいってわけでもなかったからいいんだけど…衝動的にだったのかな。


それはそれでこれからも心臓に悪いから控えてほしいなぁと火照る頰を手で押さえて目を伏せる。


見上げるのは慣れてるけど見下ろすのは慣れていなくて変な感じだ。




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