完璧上司の秘密を知ってしまった件について
その場に取り残された凛は、酷く胸が痛んだ。

なぜこんなに胸が痛むのか。凛にはわからなかった。

…この日を境に、須藤課長は、本当に凛には仕事の要件以外で話しかける事も無くなった。

あの毒舌も聞けなくなった。よかったはずなのに、清々したはずなのに…

「…凛?どうかしたのか?」
「…え?」

…ランチタイム。社食でいつものように新と2人で食事をしていたのだが、元気のない凛を心配して、新が問いかけた。

「…なんか悩み事?」
「…まさか、悩み事なんてあるわけないじゃない」

そう言って笑って見せる凛だが、新はずっと凛を見てきた。凛がいつもと違う事は分かっている。

「…あ、須藤課長、綺麗な人と話してる」
「…え?」

社食の入口で、須藤課長が綺麗な女性と仲良く話してる。凛は無言で2人を見つめていた。

「…凛?」
「…あれ、私」

凛の頬に涙がつたい、慌ててそれを拭うと、その場を逃げるように、須藤課長たちの横を通り過ぎて行った。
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