すきだから
「―――はーい、人の悪口はそこまで」

止まらない女子の暴言に、飲み終えたコーヒー牛乳の紙パックをぐしゃりと手で握り潰しながら、千歳は制した。

声こそ明るく表情はにこやかだが、目は笑っていない。

その冷たい視線に女子達は一斉に話すのを止める。

「俺さ、人の悪口を言う人嫌いなの。しかもさ、俺が告白した人の悪口を聞かされるって、どんだけムカつくかバカじゃないからわかるでしょ?」

そう言うと近くにあったゴミ箱に、潰した紙パックを勢いよく投げ込む。
ガン!と音を立てて紙パックはゴミ箱に吸い込まれた。

「俺が本気で怒る前に止めときなよ。どうなっても知らないよ?」

怒りに満ちた一言に、女子は青ざめた表情でその場から離れた。

千歳はそんな女子を横目で見ながら、教室を出ていく。

普段はそんなに感情の起伏が激しい訳ではないが、自分の好きな女の悪口を聞かされるとどうしても感情が昂ってしまう。

少し冷静になろう、と千歳は屋上へと向かう事にした。

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