すきだから

「・・・香苗?」

雄太に名を呼ばれて、ハッと我に返った。


私は考え込むと、周りが何も見えなくなってしまう悪い癖がある。
どのくらい考え込んでいたのだろうか、目の前の雄太は怪訝そうな表情を浮かべて見ていた。


「あ、ああ、ごめん。ちょっと考え事してたわ」

「考え事?別れ話が余程ショックだった?」



・・・は?



「え?・・・うん・・・まぁ・・・」


雄太の表情は、怪訝な顔から少し笑みを浮かべた表情に変わっている。
ちょっとした余裕があるようにも見える。


別れ話を俺から言われてショックでしょ?

と、心の中で言っているような、自分が下に見られているような感じがして、イラッとした。

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