すきだから
溢れる涙を袖で拭うと、茫然としている雄太をのけてその場から去ろうとした。

「もう・・・行くね」

扉の取っ手に手を掛けた瞬間に、その手は雄太に拘束された。

雄太の顔を見やる。
その表情はひどく歪んで今にも泣きだしそうな、そんな顔だった。

「・・・嫌だ、返さない」

「・・・離して」

「嫌だ」

掴まれた手はさらに強くなる。
グイッと、雄太の身体の中に引き寄せられた。

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