片道のRe:
10年越しの今日、私の初恋は終わりを迎える。
イギリスの詩人、トマス・スターンズ・エリオットは、次のような言葉を残している。

始まりと呼ばれるものは、しばしば終末であり
終止符を打つということは、新たな始まりでもある。

終着点は、出発点である。


今を生きる私にとっては、有難き先人の格言だけれど、あの頃を生きた私にとっては、突っ撥ねたくなる程の嫌味だ。


誰が好き好んで、終末など目指すものか。

皆、その先にある未来を掴む為に、今を懸命に生きているだけだというのに。


好きで、ただ好きで、ただただ走った。

余りに夢中で目を瞑っていたから、時々転んだりもした。


擦り剥いて、削られて、研磨された心は決して丸くはならなかったけれど。

実らなかった初恋は、本当に、不幸せでしたか。


――あの頃の、私へ。

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