キミへ
「何も言ってねぇだろ」



30㎝くらい下を見下ろす。



ナツキは一向にこちらを見ようとも
しないし顔色も変えやしない。



こいつは何を見てるんだ?



少しはこっちを見ろよ…。



「分かるんだ」



そっと口を開けた彼女の顔に
表情の色はなかった。



冷たい顔。だけど真っ直ぐな目。



「あたしも、ウソツキだから」



そう言うと顔を少し上げて
俺と目を合わせた。



そしてにっこりと笑って、
窓の方へと歩いて行った。



俺はさっきの本のたまたま開いた
ページに目を下ろす。



どうやらそれはネパール語の
単語の本だったらしい。



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