我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「実はね、私、春からあなたと同じ大学なんだよ」


「えっ、そうなの!こっちの大学受けたんだ・・・って、なんで俺の・・・」


「海ちゃんから聞いたの」


どうやら、一昨日の海との電話で聞いたらしい。


「凄い偶然だよね」


「偶然じゃないよ・・・何校か迷ってたんだけど、海ちゃんにあなたが受験するって聞いたの。だから、あなたと同じ大学を第一志望にしたんだよ」


アルバムをめくる手が思わず止まる。



いや、普通に考えて、知り合いが一人もいないよりは、一人でもいたほうがいい。

そういう考えからの言葉だろう。


「あっ、でも俺の学部・・・」


「でも、本当に合格できるとは思わなかったけどね。嬉しいな~」


話を切られてしまったが、このことは後で話せばいいだろう。


「俺も嬉しいよ」


「まだ一人暮らしは駄目なんだけどね。四つ隣の駅にお姉ちゃんがいるから、お父さんがしばらくは二人で暮らせって。でも、四つだったら十五分くらいだよね?」


本当に嬉しそうに話している彼女の声を聞いて、先程の件は完全に行き先を失ってしまった。



今日でなくても、また別の機会に話せばいいだろう・・・


別の機会


まさか、またこんな風に話せる日がくるとは・・・


「ごめんね。なんか、私一人で話してるね」


「いや、全然いいよ。なんか思い出しちゃってさ、さくらさんがうちの高校にいた頃のこと。あの頃は、学校でよくこうして話してたよね」


「・・・」


「楽しかったなって・・・」
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