ロールキャベツは好きですか?

side:祈梨


怒鳴りつけてしまった。
冷静に別れ話なんてできなかった。

……目の前で祥吾くんが固まっている。

その手から力が抜けていたから、私はスルスルと手首を抜き取り、ブラウスを着た。

罪悪感でいっぱいだった。
こんなの……ただの八つ当たりだ。

私が全部悪いの。
ちゃんと整理できていない中途半端な状態で彼と付き合って。

秘密があるのに、ずるずると関係を続けて。

全て私が悪いから、最後はとんでもない悪者になる。

「……それって祈梨さんの意志でやったの?無理矢理だったんじゃないの?」

「私の意志だよ」

「部長のセフレまたやるの?」

「うん」

彼の唇が歪んだ。

━━━ああ、私、あなたを傷つけてる。

でもこれでいい。
この傷を乗り越えて、幸せになって。

杏を抱っこするときのような優しい笑顔で、誰かの"お父さん"になって。

私が守りたいもの。
それはあなたの未来の笑顔だから。

「こんな上司じゃ、あなたに顔向けできないし、偉そうなこと、言えない。だから、仕事も辞めるわ」
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