ロールキャベツは好きですか?
「渡邊主任と話したの?」
「少しだけね。退職のはっきりとした理由はわからない。まぁ原因は……俺、かな」
子供がほしいという一言がなければ、祈梨さんは俺と別れるという最終決断をしなかったかもしれない。
そう思うと俺はなんて無神経だったのだ、と自責する。
「別れでも切り出された?」
項垂れる俺の肩にそっと手が乗せられた。
俺は迷ったけれど、頷いた。
「たぶん、俺のことを考えて、別れようって言ったんだろうな」
祈梨さんの優しさはわかる。
だけど……俺は……。
「俺は……別れねぇよ。辞職なんか全力で阻止してやる」
俺の誓いに向井が微かに笑った気がした。そして、ポンポンと肩を何かで叩かれる。
「あんたならそう言うと思ってたから、こっそり持ってきたよ」
向井が俺に手渡したのは、祈梨さんが書いた辞表だった。
「まだ人事部にはこの話はいってない。阻止するなら、今のうちよ」