ロールキャベツは好きですか?

side:祈梨


「……4年前にね。妊娠したの」

祥吾くんから靴下を受け取って、静かに語リ始めたのは、私の過去。
ずっと誰にも言えなかった秘密。

洋平に聞いていたという祥吾くんは全く驚いた素振りは見せない。
初耳の忍や佐藤さん、向井さんは目を瞠っている。

「……4年前ってことは……双山部長の子供?」

祥吾くんの言葉に躊躇いながらも、頷いた。
私の仕草に向井さんは息を呑む。

双山部長と私の関係は4年前まで遡るとは思わなかったみたいだ。この関係を知ってるのは、ここでは、祥吾くんだけ。

忍や佐藤さんも瞳に驚きを滲ませている。

「最低だと軽蔑されるかもしれないけれど、部長とは、身体の関係だけあったの。だけど、あの頃は本当に大好きだった。部長のことが」

無邪気に部長の背中を追いかけていたあの頃の私を一発殴りたい。
それぐらい今は、あのひとを好きになった自分に後悔している。

「だけど、気持ちを返してもらえないまま……部長はアメリカに行ってしまって。そんなとき、妊娠してることに気がついた」

大好きな人の子ども。
だけど相手はアメリカに行ってしまって、帰ってくる気配はない。
恋人でもない私は彼に連絡するのもためらわれた。

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