セカンドパートナー

 当時の携帯電話には通話とメールの機能しかなく、メール画面はモノクロだった。かろうじて絵文字はあったけど、現在のスマホやLINEにあるものみたいに種類豊富ではなかった。

 LINEのような交流用アプリもなかったし、通話料やメール料も今に比べ高い。

 なので、頻繁に連絡はできなかったけど、それでも精一杯気持ちを伝えられるよう、その呼び出しメールを作るのには普段の何倍も神経を使った。

 並河君と友達付き合いをしつつ、彼の男友達と付き合っているとウソをつき通した高校時代。告白されることはあっても彼氏ができることは一切なく、その一方、並河君に恋愛感情を抱いている自覚はあった。

 恋愛感情まではいかなくても、並河君も私のことを嫌ってはいないはず。少なくとも、異性の親友くらいには思ってくれてる。

 それを確かめるための呼び出しだった。

 並河君が来たら、私に対する彼の気持ちを訊くつもりだった。それでもし女として好きだと言われたら、私も告白しようと考えていた。

 並河君は指定の場所に現れなかった。朝から夜まで、待っていたのに。

『並河君は詩織のこと好きだと思うよ。卒業して進路も別々になるし、後悔しないようにその辺ちゃんとハッキリさせといた方がいいと思う』

 羽留の言葉に励まされ強引に彼を呼び出したけど、それは私側の勝手な都合であり、妄想のような確信だったんだと思い知った。

 3月とはいえ、日が沈むと冷え込んだ。

 待っている間に冷えた体が現実の冷ややかさを痛感させ、涙がこぼれた。

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