セカンドパートナー
理不尽なことを言う親に反発するのも、愛されたいがゆえの抵抗。そして、愛されるために考えた私なりの無気力な努力。
そう気付いても現実は変わらなくて、親の暴挙は相変わらずだった。
私の反抗的な言動に腹を立てた父が、母が洗い終えたばかりの食器を床に投げつける、なんてこともこの頃は日常茶飯事になっていた。
母が無言で私を責めた。視線で分かる。
生まれた頃も物音に敏感だったらしいが、私はこの頃からますます物音に敏感になった。
怒鳴り声や物が壊れる音を聞かずにすむ学校はこれ以上ない安らぎの場に思えた。
そのまま季節は冬になった。
並河君に対してのイメージは「絵の才能がある、美術科の気さくな人」のまま更新されることなくストップしていた。
季節の変わり目、並河君が風の香りの変化に気付いた時はたしかに心が弾んだのに、その出来事すら、飛行機雲がいつの間にか青空から消えてしまったかのように心から消えかけている。
並河君が私を好きかもしれないというウワサすら、はじめからなかったもののように感じる。それを知った時は、嬉しかったはずなのに。
私は冷たい人間だ。
好かれているのかもしれなくても、簡単にその相手を好きにならない。中学の時もそうだった。
むしろ、人と接する時、相手を冷静に観察し、無意識に距離を置いてしまう。よくメディアに取り上げられる一般的な高校生みたいに、ノリよく明るく人に近づくことができない。
表情が乏しく、若いのに声のトーンが落ち着いているせいか、小学生の頃は暗くておとなしい子だとよく言われた。
そんな中でも、偏見を持たず優しく話しかけてくれる男子はいた。それでも、私は相手に好感も関心も持てなかった。