お前のとなりは俺だから


すると、今まで黙っていた楓が、「夏菜、お昼食べたの?」と聞いてきた。

私は言葉に詰まりそうになりながら、「あー、うん。食べたよ」というと、楓は、「ふうーん」と言った。


「じゃあ、夏菜も、食べ終わってるみたいだし、次の授業の準備しなくちゃねー」


楓は、そう言った後、鼻歌を歌い出した。

皐月は、未だになにか言いたげにこちらを見ていたが、自分の席に戻って準備を始めた。

私は、ホッと息を吐きだして、授業の準備を始めたのだった。


……が、食べていないものは、食べていない。

当然の事ながら、時間が経てば、お腹は……、空くよね。


5時限目が終わり、私はトイレの手洗い場。

流しを見ながら、大きなため息をついた。


お腹が空いているということをバレないようにするために、トイレへと来たものの……。


「ゔぅー、お腹空いた……」


変な意地を張らなきゃ良かったな……。

いや、でも、あそこで食べてないって言えば、その場で、あのお弁当箱を開けなくちゃいけないわけで……。


「……やっぱり、言えないよ……」


母さんに悪いことしたな……。

謝らなくちゃ。


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