知らない貴方と、蜜月旅行
なにそれ…。もしかして、陽悟って人が私を最初に拾ったから、それで紹介ってことにしたってこと…?


「あー、でもいいですねぇ。結婚って、憧れます。プロポーズがあって、指輪もらって、結婚式挙げて、新婚旅行!女の憧れですよねぇ」
「そ、そうですよね」


私の場合、プロポーズがあって、指輪もらって…逃げられたんだけどね。そんなこと口が裂けても言えない…。


「でも、こんなカッコイイ男性、まだ独身でいるんですねぇ」
「顔だけだと思いますよ、口は悪いんで」
「おい、紫月」
「ほら、この感じとか」
「お前…」
「ふふっ、仲良しなんですね」
「あ、ごめんなさい…!」


太田さんにクスクス笑われたり、田中さんが楽しく会話をしてくれたり、途中気持ち良くなって寝てしまったり。そんなひと時が私にとっては、とても癒された時間だった。


「おいしー!」


そんなこんなで私たちは今、一番楽しみにしていたカフェに来ています。そして、大好きなチーズケーキを食べ、今私は幸せ絶頂期です。


「紫月…」
「なに?」
「そんな顔もできるんだな」
「…なによ、そんな顔って」
「すげぇ、幸せそうな顔」
「………」


思えば幸せって思うこと、なかったんだ…。亮太がいなくなってから。


「もっと食え」
「え、一個でじゅうぶんだよっ」
「せめて、もう一個食えよ」
「な、なんでよ。太るでしょ!?」
「だから、お前の幸せな顔、見てたいんだって」


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