知らない貴方と、蜜月旅行
吏仁の言葉に、なにも返すことができなかった。私の幸せそうな顔が見ていたい…って。本当に私はこのままでいいのかな。このまま、夫婦を演じて、本当にいいのかな。


「ねぇ、吏仁…」
「あ?」
「……吏仁は、その…私なんかといて、幸せなのかな」
「さぁな」
「さぁな、って…」


やっぱり、このまま一緒にいても、よくない気がする…。全然知らない赤の他人を巻き込むって…。


「正直、今はあまり幸せじゃねぇだろうな」
「………」
「でも、そのうち幸せになるんじゃねぇの」
「そのうち、って…?」
「紫月が俺を好きになったら」
「……私が吏仁を好きになれなかったら?」


幸せになるのは、私が吏仁を好きになったら。じゃあ、私が吏仁を好きになれなかったら…。そんなことを聞いてみたけど、吏仁はやっぱり吏仁だったよね。


「それはねぇだろ。お前は必ず俺を好きになるよ」
「すごい自信…」
「そりゃそうだろ。自信がなかったら、こんな行動しねぇだろ」
「……うん」


今、私の心はグチャグチャ。会えないままになっている亮太の存在。もう、私たちが出会うことはきっとない。そして、恋人同士になることも…ない。


分かってる。頭では分かってるの。だけどね、あんな別れ方、正直前に進むことができないよ…。ただ〝ごめん〟だけで、いなくなるなんてさ…。


亮太はズルイよ。亮太は前に進めるかもしれないけど、残されたコッチの気持ちも考えてほしい…。こんな気持ちのまま、吏仁と一緒にいるなんて、吏仁にも申し訳なさすぎる…。


「吏仁…」
「ん、どした」
「私、亮太を忘れるのに時間かかるかもしれないよ…?」
「そんなん、分かってるって」
「時間、かかってもいいの…?」
「あぁ。でも、紫月は気付いてないだけで、きっともう俺の方に傾いてきてるだろうけどな」


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