知らない貴方と、蜜月旅行
「お父さんさ、酒飲んで、ポロっとこぼしたんだ」
「なんて…?」
「一人娘の結婚式、見たかったな…って」
「………」
「その後、慌てて。今のは聞かなかったことにしてくれって焦って言ってたけど」
「そっか……」


気にしてない感じでも、本当はお母さんも見たかったのかな。でも、もう一度結婚式って…。お金もかかるし…。


「俺も、両親に見せてやりたくなった」
「え?」
「言っただろ?当日にドタキャンされた、って。だから、見てねぇんだよ」
「……あ」


そうだ…。吏仁のご両親は、式場しか見てないんだ。きっと楽しみにしていたんだろうなぁ…。吏仁の結婚式。


「オヤジなんか、すげぇ喜んでたろ?お前紹介した時」
「そういえば…。そうだったね」
「母さんも喜んでた」
「…うん」


そうだ、すごく喜んでた。それは、吏仁が一度傷付いてるから…。だからもう一度、結婚すると聞かされて嬉しかったんだ…。


「あ、そういえば。お義母様大丈夫?」
「なにが」
「なにが、って。病気なんでしょ?」
「は?」
「は?」


〝は?〟ってなによ。思わず私まで聞き返しちゃったじゃない。え、なに。病気じゃないの?!


「吏仁、あの時言ったでしょ!〝母さんもうすぐさ…〟って。私、なにかの病気かと思って心配したのに違うの?!」
「あー。あれは、紫月を母さんに会わせる為にだな、」
「騙したの!?」
「………」


黙った…黙ったよ。信じらんない。本当は思いきり叩いて蹴飛ばしてやりたいけど、よそ見して事故に遭ったら大変だから、怒りを抑えるようにして我慢した。

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