知らない貴方と、蜜月旅行
「じゃあ、また遊びに来るね」
「はいはい、今度はゆっくりいらっしゃいな。吏仁くんは、大丈夫?」
「えぇ…大丈夫、です。ごちそうさまでした、また遊びに来ます」


玄関先でお母さんとお父さんが見送る中、吏仁は少しフラついていた。チラッとお父さんを見れば、申し訳なさそうにしている。きっと楽しくて、つい飲ませすぎちゃったんだろうなぁ…。


「ねぇ、大丈夫?結構飲まされたんじゃない?」
「多少、な」
「それって多少とは言わないと思うけど…」


家から車までの間、少しだけ私にもたれるようにしながら歩く吏仁。きっと断れなかったんだろうな。もっと早く気付いてあげるべきだった。


「家に着くまで寝てていいよ。道は分かるから」
「あぁ、悪いな」


てっきり後部座席に乗って寝るのかと思いきや、助手席で寝るらしい…。私としては後ろで転がってくれていたほうが楽なんだけど…。


「なぁ」
「あれ?起きてたの?」
「あぁ」


車を発進させて、少し経った頃、吏仁に声をかけられて、ビックリした。いつから起きてたんだろう?まさか、私の運転が怖くてずっと起きてた…?


「どうしたの?トイレとか?」
「ちげーよ。……結婚式、やり直そうか」
「は?今、なんて…?」


結婚式をやり直す?どうして?あれは、亮太との結婚式だったから?何度も〝小西〟と呼ばれて嫌だった…?


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