知らない貴方と、蜜月旅行
「お客様、どのような指輪をお探しですか?」
「彼女の結婚指輪を。ずっと買ってやれなかったからね」
「ずっと、って。結婚してから、そんな経ってないでしょ?」
「でも、当日に渡せなかったろ」
「それは、事情があったから仕方ないじゃない」


当日になんて無理に決まっていた。なんせ出会って二日後の式だったんだもの。


「ほら、お姉さん困ってるでしょ?ごめんなさい」
「いえいえ、新婚さんなのですね。すごく幸せオーラが伝わってきますよ」


幸せオーラって…。なんか私たちの頭の上に、お花畑でも咲いているのだろうか…。だとしたら、こっぱずかしい。


「あ、あの。シンプルなデザインがいいかな…と思うんですが」
「あぁ、そうなんですね。シンプルなのって一番飽きが来なくていいですよね。では、こういうのはいかがですか?」
「あっ、可愛い!と、思いましたが、もうちょっとシンプルでもいいんですけど…」


どうして、こう売る側の人って高いのを勧めるのかな。まぁ、仕事だから仕方ないんだけどさ。目ん玉飛び出るかと思ったよ。


お姉さんが出してきたのは、80万の指輪…。そりゃあ、80万だもの。本気で欲しい!ってトーンで、可愛いと言ってしまったじゃないか!


途中で路線変更したけど、吏仁に気付かれてないかな。そういうとこ、察知する人だからなぁ。


その後も色々勧めてはくるのだけれど、どれも80万超え…。なんだろう、吏仁から金の匂いでもするのだろうか。そんな勧められては、うーんと唸り悩むこと15分。


「(あ!これ、すっごく可愛い!)」


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