知らない貴方と、蜜月旅行
「私……明日、式があるんです…」
「式?」


眉をひそめ聞き返す彼に、小さく頷いてみせた。


「結婚式…」
「へぇ〜」
「でも、なくなっちゃいました…」
「なくなった?」


更に彼の眉間にしわが寄り、意味が分からないというような表情をした。


そりゃそうだ。明日結婚式があると言って、それがなくなったと言われたら誰だって変に思う。


「仕事をクビにされて、ショックでした…。けれど、メソメソもしていられないと思って。彼、亮太(りょうた)とは、もう同棲をしていたので、いつも通り家に帰ったんです」


亮太とは、もう3年同棲していた。その前の交際期間も入れると、5年間一緒にいたことになる。


仕事のことは落ち込んだけど、お腹をすかせている亮太の為に早く帰らなきゃ、って思ってた。


亮太の顔を見たら、きっと私はそれだけで癒されて、頑張れるって思ってた。


ドアを開けるまでは……。


< 18 / 185 >

この作品をシェア

pagetop