知らない貴方と、蜜月旅行
すごく偉そうだけど、実は優しいのかな?私が逆の立場だったら、どうしていただろう。


そもそも、酔っ払った人を保護しようとは思わないかもしれない。どんな人間かも、わからないわけだし…。


なのに彼は、結果的には押し付けられたのかもしれないけど、こうやって私の話を聞いてくれようとしている。


私は弱い人間で、一人じゃどうしようもなく、お酒に溺れた。お酒にしか頼ることができなかったから…。


「あの、私…」
「あぁ」
「会社をクビになりまして…」
「……」


長年、働いてきた会社だった。自分でもそれなりに頑張ってきたと思う。遅刻だって早退だって、休んだことさえなかった。なのに…。


「佐野さん、明日から会社来なくていいから。って言われて…」
「理由は?」
「……聞いても〝決まったことだから〟の一点張りで最後まで教えてもらえませんでした…」


それでも引き下がれなくて、せめて次の仕事が決まるまでと、頼んでみたけどダメだった…。


「なんだそれ」
「……私、一応マジメに仕事してきたつもりです。だから、納得できなかったですけど、仕事はココだけじゃないから、頑張ろうって思ってたんです…」
「おぅ、そうか。前向きになることは、いいことだよな」
「はい…。でも…っ」
「ちょい、待て。何でまた泣くんだよ…。仕事はソコだけじゃないって、自分で言っただろうが」


そう…。仕事はアソコだけじゃない。だから、次のとこ探して頑張ろう!って思っていたのに…。


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