知らない貴方と、蜜月旅行
改めて、部屋を見渡してみる。テレビもソファもテーブルも、スピーカーもなにもかもがなくなってる。


きっと亮太は前から決めていたんだろうね。私が仕事に出た瞬間に、業者でも呼んで家を出たのだろう。


じゃなきゃ、早急に業者なんか予約できるわけもない。一人で、こんなもの運べるわけもないし。


もう、なにも考えたくなくて、冷たくなった床に手も足も広げ、寝っ転がった。


(この家の天井、ちゃんと見たの初めてかも…)


真っ白なんだけど、細かい凹凸があって。なんか今なら何時間でも見ていられる気がした。


『ヘックシュ…!!寒っ…』


さすがに暖房の入っていない12月は寒い。身をブルッと震わせ、重たい体をゆっくり起こした。


まだ目が痛いけど、きっとすぐにいつも通りの私に…もど、れるのかな…。そんなことを思いながら、亮太と過ごしたこの部屋を見て歩いてみる。


そんなに広い家じゃなかったけど、私たちはじゅうぶん満足していた。6畳のリビングに、対面のキッチン。カウンターがあって、いつも二人並んでごはんを食べた。


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