知らない貴方と、蜜月旅行
言われた通りにティッシュを一枚取ると、目のふちをゴシゴシ擦らないように押し当てて拭いた。


「もっと、くだらない話かと思ってた」


次に彼が発した言葉は、こうだった。くだらない話…。私もそうだったら、良かったのに…なんて思ってしまう。


「でも、あなたにとったら、くだらない話なんじゃないですか?結婚式前日に逃げられる花嫁なんて」


自分で言って、おかしくなってきた。さっきまで、どん底に落ちてたのに、よくよく考えたら、結婚式前日に逃げられる花嫁って早々いるもんじゃないよね。


普通は、普通に迎えられるものだもん。私って、どんだけヒドイ女だったんだろうな。


あぁ…ダメだ。やっぱり私、亮太のことが大好きで、現実を受けとめきれない。また、涙で視界がボヤける。


「そんなことねぇよ」
「え…?」
「くだらなくねぇ、って言ってんだよ」
「……っ」


また涙腺が崩壊してしまった。せっかく化け猫から、脱出できたと思ったのに、また化け猫に逆戻りだ。


ねぇ、亮太…。どうして私じゃダメだったのかな…。ここに来て理由(わけ)を教えてほしいよ…。


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