知らない貴方と、蜜月旅行
なんだか聞きたいことは、まだ山ほどある。あるんだけど、さすがに昨日の今日で疲れてしまった…。


「ねぇ、吏仁」
「あ?」
「なんか疲れちゃって…。もう、カレー食べれない…」


あれからすぐに、カレーを食べ始めたんだけど、半分も食べないうちにお腹いっぱいになってしまった。


「ん。風呂入れてあるから、入ってもう寝ろ」
「いいの…?」
「なにが」
「だって、残しちゃったから…」
「バーカ。俺、鬼じゃないっての」
「でも、さっきはカツ丼かカレーかって厳しかったじゃない…」


食べれないって思ったから、おにぎりを選びたかったのにさ。でも吏仁が私の手を叩いて、結局食べたくもないカレーを食べさせたんじゃん。


「お前、おにぎりしか食ってないじゃねぇかよ」
「え…」
「カツ丼は絶対選ばないと思ったから、カレーにした。野菜も入ってるし。つーか、野菜入り弁当がカレーしかなかったってのも理由だけどな」


たまに、こうやって吏仁は優しくなるんだよな。彼のことはよく知らないけど、なにも考えてないわけじゃないんだというのが、よくわかった。


「ありがと…」
「べつに。それより早く風呂入れ。風呂は、あっちの扉な。下着類は全部脱衣所にあるから、使えよ」
「あ、うん…」


そういえば帰宅してすぐ、あっちの扉、入って行ったんだっけ、吏仁。きっとお風呂も準備してあって、まるで私が早く休みたいのを、わかってくれてるような気がした。


言われた扉を開けると、パジャマだけは袋から出されてあったけど、下着は袋に入ったままだった。バスタオルも用意されていて、旅館のような扱いに少しだけ頬を緩ませると、お風呂に浸かり、遠慮なく先に休ませてもらうことにした。


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