知らない貴方と、蜜月旅行
亮太とは、来たかった。そりゃあ、来たかったよ。でも、吏仁に面と向かって言われると、ハッキリと言えなかった。


「探偵でも雇って、捜し出せばよかったか?」
「………」
「バレバレなんだよ」
「え?」
「なんで私はこんな男とここに来てるんだ、って。思ってんだろ?」


私は吏仁を見つめるも、吏仁の視線は私ではなく、広い海。吏仁がどういう思いで籍を入れたかは、わからないけど、戸籍上はもう夫だ。そんな夫を隣に置いて、私は元彼を想うなんて、私は最低なのかな。


「ねぇ、吏仁」
「なに」
「RIRIKAって、誰?」
「……あー、見たんだ。さすが女だね」
「バカにしてんの?」
「いや」


ここにきて私は、指輪の話を持ち出した。私が見ると思っていたのか、思っていなかったのか、吏仁は驚くこともなく、そして焦ることもなく、横目で私を見下ろした。


「私には、話せない人?」
「いや、そんなことない。ただ、先に飯食わねぇ?腹減った」
「でも、」


吏仁の腕を掴んだ時、運悪く、私の腹の虫が騒いだ。最悪だ。吏仁は、クスクス笑うし、私はどんな顔をすればいいのか、わかんないし。


「なに食う?とりあえず行って決めるか」
「……うん」
「紫月」
「なに」
「RIRIKAの正体気になんだ?」
「べつに、そういうわけじゃ……」


気になるけど、吏仁が言う意味とは違う気がする。


「吏仁が、RIRIKAさんを想いながら、私と籍を入れたのなら、今すぐにでも解放しなきゃって」
「……それはねぇよ。俺が想ってたら、お前とは結婚してねぇし、そもそも家にも上げたりしねぇ」


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