知らない貴方と、蜜月旅行
「ねぇ、吏仁…」
「あ?」
「やっぱりさ…。私のこと、かわいそうな人だと思った?やっぱり、同情で籍入れたんじゃない?それとも、梨々香さんに対する償いとか」
「はぁ?なんだよ、償いって。アホか」


ま、こんな話聞いたら誰だって同情とか償いとかって思うのか。たまたま出会った女が、自分と同じように結婚ドタキャンされて。んで、その女と籍を入れて、結婚式も挙げた。


俺が梨々香に、尽くしてやることができなかったから、今必死になってやれることをやってる。そう見えても、おかしくはないよな。


「紫月。確かに俺は、あいつを幸せにはしてやれなかった。けど、それと、紫月と籍を入れたのは関係ねぇよ。同情でも償いでもねぇ」
「じゃあ、どうして?どうして私と籍を入れようと思ったの?」


どうして、って…。そんなこと言われてもな。紫月を見た時、一目惚れもなかったし。普通に家に帰そうともしてたし。そんな理由を言えと言われてもな…。でも、こいつは納得しねぇんだろうなぁ。


「守ってやりたくなった、が理由じゃおかしいか?」
「え…?」
「紫月が家に帰ったら、男がいなくて、でもソイツしか自分にはいない。みたいな紫月は、正直どうでもよかったし、あの時点ではなんとも思っちゃいなかったよ」
「どうでもよかった、って…。言葉、ひどいよ!」


そう言って、紫月は怒った。頬を膨らませて、テーブルをバンッと叩いて。でも予想外に痛かったんだろう。少しだけ眉間にシワを寄せて、指先をさすってる紫月に俺はプッと吹き出した。


「なんで笑うの…!」
「あー、悪りぃ。あまりにも、おかしくて、つい」
「っ、だから笑わないでよ!」


あー、おっかしい。俺が笑えば笑うほど、紫月は怒る。だけどそれは、本気で怒ってんじゃない。見ればわかる。


「あの時の電話」
「え?」
「紫月が、式場に電話しただろ?」
「うん…」
「電話して、お前はキャンセルできなかった。その時にかな。あぁ、俺がいなきゃダメになるなって思ったのは」
「え…」


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